HIROSHIMA GOOD THINGS

10サンジのうつわ

from

広島県江田島市

江田島の自然を纏った、美しいうつわたち。

瀬戸内の多島美と豊かな自然に囲まれた島、江田島に工房を構える陶芸家夫婦がいる。若狹祐介氏・蓮尾寧子氏の夫婦ふたりが静かにろくろを回す姿とともに、穏やかな空気が流れる工房。その工房に併設された古民家の2階で週末のみオープンするのが陶ギャラリー「10サンジ(ジュウサンジ)」だ。ギャラリーに一歩足を踏み入れれば思わず「わぁ〜!」と声をあげたくなる光景が。豆皿、大皿に碗、マグや酒器など日常の様々なシーンになじむ作品から、存在感のある花器、オブジェのような佇まいの力強く独創的な器まで、多彩な作品がずらりと並ぶ。

インスピレーションの源は、この江田島の温暖な気候に抱かれた四季折々の自然だ。青くゆきわたる空、穏やかに流れる海、実り豊かな恵みの山。柔らかく変化しながら様々な表情を見せるこの島を全身で感じ、生み出される作品たちには夫婦それぞれの個性が際立つ。ご主人の若狹祐介氏が表現する「藍香」シリーズは、海のようにも空のようにも思える深みをたたえた美しい「青」が印象的だ。他にも、輝きと錆びが共存した作品や、滲みや垂れが複雑に混じった作品などは温かくも力強い大地を思わせる。そして奥様の蓮尾寧子氏の作品には、全体にゆるりとしたやさしい空気が流れている。その個性がよく表れた小豆色の碗の数々は、ぽっくりと丸みを帯びてどこか懐かしい表情。なんとも言えず柔らかくて、あったかい。

そんな夫婦それぞれの個性は響き合って、一つの食卓に並んでも見事に調和するから面白い。それはきっと、夫婦ならではのシンパシーと、江田島の四季折々の自然を感じる共通の肌感覚によるものだろう。

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