継承と進化を続ける職人技術。

広島県府中市といえばまず一番に代表産業として挙げられるのが「府中家具」 という総称で古くから根付いてきた家具産業。約300年前に一人の職人の手によって始まった箪笥作りからやがて高い技術を持つ職人たちが集まり、婚礼家具づくりが代表産業となったこの地には、今も街全体に志の高い職人魂が息づいている。「木工神社」なるものまであるというから、この街にとって家具・木工業がいかに大切なものかという歴史が垣間見える。そんな府中市に根をはり長く産業を支え続けているのが株式会社松創（まつそう）だ。その発祥はなんと安政2年（1855年）で、約160年以上の歴史が！ 釘などの金具を使わず木材を美しく組み上げる指物技術、木の肌を磨き上げて鏡のようにツヤを出す研磨技術など、脈々と継承しながら進化してきた技術にはもうため息しか出ない。その高い技術を活かして高級家具を中心に制作してきた松創が、府中家具の魅力を世界に伝えることを目的として2013年に新たに立ち上げた家具ブランドが「MEETEE（ミーティー）」だ。

160年の技 × 現代的なクリエイティビティ。

世界的に活躍するプロダクトデザイナーの倉本仁、スウェーデンのデザイントリオユニット 「CKR」、フィンランドはヘルシンキのデザイナー ハッリ・コスキネンの3組をデザイナーに迎え、松創の160年の職人技術とデザイナーのクリエイティビティが高次元で融合するウッドファニチャーブランドMEETEE。写真で紹介しているのは2014年にグッドデザイン賞を受賞した、倉本氏デザインの「Nadia」シリーズ。日本の家具職人に受け継がれる木工技術の歴史には船大工の技術から発展してきたものが少なくない。そんな着想から木造船の美しい組み木構造をテーマに生まれたシリーズだ。指物では極めて難しいこのデザインをここまで美しく具現化することができたのも、松創だからこそ。

デザインに対する目が肥えたスウェーデンやドイツでも好評を博しているMEETEEの家具。「目的を形にするために道具がある。用途に応じてノミやカンナは自分でつくる。」なんていう職人たちの声を聞けば、この椅子で過ごすあなたの時間はより味わい深いものになるだろう。