PROJECT

トータテが手掛けるプロジェクト

開発プロジェクト事例

P R O J E C T R E P O R T

    

第2話

街づくり

産学連携

まちのコミュニティハウスプロジェクト 【2】

それぞれが胸に秘めた
プロジェクトへの想い

upload.2019.12.20

「まちのコミュニティハウスプロジェクト」成功に向けてタッグを組んだトータテ都市開発・ブルースタジオ・広島女学院大学。3者それぞれの想いはどんなものだったのでしょうか。

特色あるまちづくりに向けて
産学が連携した先進的な
プロジェクトがスタート

株式会社トータテ都市開発
大里 隼平

 このプロジェクトは、弊社が牛田早稲田にあった国家公務員宿舎の土地を取得したことから始まります。当初は一般的な住宅地として開発を進めていく予定でしたが、既存のものを活かし大切にしながら町をリノベーションしていく株式会社ブルースタジオの取り組みに共感。すぐに連絡を取り、現地を視察したり国家公務員宿舎の図面を見てもらったりしました。建物の耐久性や配置の関係で建物のリノベーションは叶いませんでしたが、それに替わる新しい開発地の計画がスタート。周辺に既存の住宅やコミュニティが存在する中で、新しい住宅が建設され、そこでまた新しいコミュニティが生まれる。その新しいコミュニティが単体で継続するのではなく、今あるコミュニティに深く関わり、寄り添うことができないか。そんなことがテーマになっていきました。横の繋がりを大切にする社会は、これからの時代に必要なカタチです。地域に大学がある強みを活かすため、広島女学院大学にもプロジェクトへの参加をお願いしました。学生さんたちが担当するのは、誰でも気軽に集えるコミュニティハウスの設計。学生さんたちにも知らないうちにできたものを活用してもらうより、一緒に関わり思い入れのあるものにし、利用してほしい。ここを拠点に地域の人、学生、新しい住人のコミュニティが広がることを願います。
コミュニティハウスを計画する開発地では、広場に向けてフットパスがあり、緑も豊か。旧市内でありながら豊かな暮らしができるまちへ。このプロジェクトを通して、トータテは人と人との繋がりを大切にした、持続可能なまちづくりに挑戦したいと思います。

「ベッドタウン」が
「里(さと)」にかわるとき
蓄積された暮らしの価値を
再編集するまちづくり

株式会社ブルースタジオ
大島 芳彦

 トータテから相談を受け、牛田早稲田の現地を視察した時の第一印象は、典型的な昭和の郊外宅地団地が高齢化し静まり返った現代の姿でした。大規模な国家公務員宿舎が除却された直後の状況で子供達の声が街から遠のき、空虚な印象まで受けました。しかし街歩きを進めるにつれ見えてきたのは60年代に生まれたこの街が積み重ねてきた街としての年輪、人々の暮らしの蓄積でした。トータテが手掛ける新しい住宅地は、この牛田早稲田の街のど真ん中に生まれます。つまりこれだけ大規模な郊外の宅地開発でありながらゼロから自然を切り開いて造られるものではなく、既存のまちの暮らしを受け継ぎ更新していくイメージ。もともとある地域に暮らしてきた人々の歴史や想いを考えずに新しいまちを考えることはできません。私たちが考える「リノベーション」の発想による暮らしの環境づくりとは、そこに既に存在する空間資源や生活環境の価値を歴史や自然環境も含めて紐解き再編集し、既存のまちに対し未来に向けた誇りあるビジョンを与えることです。大手デベロッパーでもあるトータテがその考えに共感していただいたことに自分自身驚きも感じました。トータテのこのビッグプロジェクトにおける新しいチャレンジに心意気を感じ、ぜひプロジェクトに参加したいと思いました。
豊かな暮らしの環境とは生活者相互の豊かなコニュニケーションが育まれる環境。そして暮らす人々がそれぞれ地域において自らの居場所や参加可能な場所を持てること。それによって暮らす人々は地域に対する愛着、愛情を育んで行きます。そのための仕掛けとして全体に巡らされたフットパスや広場、そして今回のコミュニティハウスがあります。
かつて核家族たちのベッドタウンと呼ばれ画一的であったこの街は、半世紀を超えて既に3世代目が当事者として暮らしています。そこには多様な暮らしの物語が育まれ、今「ベッドタウン」は「里(さと)」として生まれ変わろうとしているのです。里とは、故郷であり人と自然が共存する場所。そこでは古いものをリセットするのではなく、積み重ねられた生活や文化を繋ぎ継承していくことが大切です。経済成長期のベッドタウンが持続可能な里に生まれ変わるというコンセプトは、広島のみならずこれからの日本において先進的かつ非常に重要なコンセプトと考えています。

建物と地域は密接な関係が
あることを 学生自身が捉えて
設計に活かしてほしい

広島女学院大学
小林 文香 教授

 トータテ都市開発よりこのプロジェクトの概要をうかがった時、販売したら終わりの住宅地開発ではなく、入居後も人と住宅地をフォローしていくまちづくりに共感しました。この話をいただいた前年に、他の住宅メーカーが建てる分譲住宅の2階部分を学生たちが設計するプロジェクトに取り組みました。そこで、今回も同じように小規模な建物の設計なら学生が実施設計にも関わることができると思い、地域の人が集うコミュニティハウスを学生たちが設計することに。通常の設計実習では、教員が敷地や設計条件などを設定し、学生たちに設計提案を求めるため、学生は敷地や周辺の地域特性にリアリティをなかなか持てません。社会で活躍するブルースタジオやトータテ都市開発などの企業と関わり、実務家の意見を聞けることは学生たちにとって大きなメリットになると思いました。特に、学生はデベロッパーと接点があることは稀ですので、デベロッパーがどんな視点で、ビジョンで、方法でまちをつくっていくのか、直に触れるいい機会になるはずです。とても面白いプロジェクトだと思いました。
学生時代は自分の生活の延長に地域があることへの実感が乏しい時期かもしれません。学生たちに、建物は地域に根差して建っているということ、地域にはそこに暮らしている人々がいるということを、自分なりの視点で捉えてほしいと思っています。今回のコミュニティハウスは、もともと暮らしている人と新しく暮らし始める人の接点となる場所。新しい関係づくりについても考えなければなりません。自分の身近にある地域や人を見据えて建築設計に取り組むことは学生たちの成長に繋がると信じています。

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